「足元から守る、東京の安心 〜地盤調査のリーディングカンパニーが語る〜」
インタビュー
建築物液状化対策促進 東京コンソーシアム
構成員インタビュー ジャパンホームシールド株式会社 様
「家を建てるとき、地盤調査をしていますか。」
法律が制定される前まで、戸建て住宅の地盤調査は義務ではなかった。
東京の軟弱地盤、頻発する地震、そして液状化リスク。全国で累計250万棟の地盤調査・解析を手がけるジャパンホームシールド株式会社に、今、私たちが知るべき「足元の安心」について聞いた。
PROFILE
ジャパンホームシールド株式会社
業務品質本部 副本部長 技術部 部長
内山 雅紀氏 ※写真左
ジャパンホームシールド株式会社
業務品質本部 技術部 技術研究所 所長
酒井 豪氏 ※写真右
Section 1:地盤調査という選択
調査を当たり前に
-貴社が現在の地盤調査事業を構築するに到った経緯についてお聞かせいただけますか。
元々、戸建て住宅では建築時に必ずしも地盤調査をしていない時期がありました。ところが、その後大きな地震を経験し、建築基準法などの改正が進む中で、地盤調査の必要性が徐々に認識されるようになりました。
そうした流れの中で、戸建て住宅を専門に、地盤調査から基礎の提案までを第三者的な立場で行うという取り組みを、いちはやく実施してきたのが当社です。日本の地盤は地域差が大きく、例えば東京では軟弱地盤が多いため、正確な地盤判断をしなければ、住宅が傾くリスクもあります。そこで当社では、地盤調査から基礎の提案、品質保証までを一体で提供するサービスとして、住宅事業者様を支えてきました。
当初、戸建て住宅における地盤調査の実施は設計者の判断に委ねられていましたので、当社も手探りの状態から始めていきました。しかし、建築基準法や品質確保に関する法律の整備、さらには不同沈下事故の発生などを背景に、地盤の品質が住宅にとって非常に重要であるという認識が、設計者や建築事業者の間で次第に広まっていきました。
その後、瑕疵担保履行法(住宅の欠陥に対する保証を義務付ける法律)が制定されたことで、地盤調査や地盤の品質に対する責任意識は一気に高まり、現在ではほぼ全ての住宅建築時に地盤調査が行われるようになりました。これは今から15年ほど前のことになります。

Section 2:災害と向き合う大切さ
東日本大震災の教訓
-2011年東日本大震災、2024年能登半島地震といった、近年の自然災害をふまえ、こうした事態に備えて貴社で取り組んできたことを聞かせてください。
当社では、大規模な自然災害に備える取り組みとして、災害発生後の自主調査や原因分析、再発防止に向けた対策提言を継続的に行ってきました。東日本大震災をはじめ、北海道胆振東部地震、熊本地震、能登半島地震などの際には、現地調査を実施し、その結果や知見をメディア関係者向けのセミナー等で報告しています。これらの活動を通じて、住民の方々が日常的に過ごしている住居や職場に潜む災害リスクを理解し、自ら適切な備えや対策を考えられるようになることを目的としています。
-前述の災害などで液状化に関するお問い合わせが増えましたでしょうか。
はい、地震被害が特に大きな地域では、液状化に関する問い合わせが明らかに増える傾向があります。
とりわけ被災したエリアでは、被災前後で液状化に対する意識に大きな変化が見られます。被災地に近い地域ほど、その意識の高まりは顕著です。一方で、被災地から距離が離れるにつれて、液状化への関心はそれほど高まらないのが実情です。少なくとも1年程度は続く傾向にあります。
-液状化の調査・対策に関する貴社の今後の取り組み方針について聞かせてください。
近年、リスクコミュニケーションという言葉が広く使われるようになってきました。これは、建て主様と建築事業者がリスクを正しく共有し、理解した上で、どのようにリスクマネジメントを行っていくかを考えることです。その際に提供される情報や将来予測は、実際に建築を行うその土地の地盤情報に即したものであることが本来の姿であると考えていますので、当社としてはまず地盤調査を実施し、その結果をもとにリスクを正しく理解することが何より重要であると考えています。
一方で、建て主様には当然ながら予算面での制約があります。現状では、液状化調査や対策は法律で義務化されておらず、あくまでも任意となっています。そのため当社では、建て主様にも利用しやすい、コストを抑えた液状化調査手法の開発に取り組んでいます。建て主様や建築事業者が、液状化リスクを知るための情報を、出来るだけ安価で、かつ分かりやすく提供すること。そして、その情報をもとに、建物設計者が建て主様とリスクコミュニケーションを行い、地盤と建物の関係性を含めて検討できるよう支援していくことが、当社の役割だと考えています。

Section 3:技術で広げる安心
地盤の品質を保証
-貴社は地盤調査・解析から品質保証までをワンストップで徹底サポートされるシステムを構築されていらっしゃいますね。
当社が提供している地盤サポートシステムというサービスは不同沈下リスクをなくすために、有資格者による徹底した地盤調査・解析を行います。建物の重さに耐えられる地盤かどうかを確認し、最適な基礎仕様や対策をご提案することで安全な地盤品質を保証しています。万が一、建物が不均等に傾き沈む現象(不同沈下)が発生した場合には、不同沈下に起因する建物の損害に対して、原状回復工事を実施いたします。
土質を「見える化」する
-貴社で開発された特許技術、SDS試験の開発経緯について聞かせてください。
従来、戸建て住宅の地盤調査では、SWS試験(スクリューウエイト貫入試験)が広く用いられてきました。SWS試験は、ロッドを回転させながら地中に貫入させ、地盤の硬さを測定する試験で、ジャリジャリなどの音により大まかな土質の区分は可能です。しかし、土質を詳細に判別したり、地層の違いを明確に捉えたりすることには限界がありました。
一方で、液状化現象は、緩い砂質土が厚く堆積している地盤に地震動が加わることで発生します。しかし、粘性土では基本的に発生しないため、砂質土か粘性土かといった詳細な土質判別が不可欠です。
こうした背景から、より精度の高い土質判別を可能とする技術として、SDS試験(スクリュードライバーサウンディング試験)を開発しました。本技術は、日東精工株式会社、東京都市大学の末政直晃教授、そして当社の三者によって生まれたものです。
-通常のSWS試験とSDS試験の採用割合はどの程度でしょうか。
建築基準法ではSWS試験が調査方法の一つとして定められていますので、基本的にはSWS試験との併用になります。その中で、SDS試験は全体のおよそ7割程度の物件で採用されています。SDS試験を行うことで土質判別の精度が上がるため、より適切で正確な基礎選定が可能になります。その結果、過剰な安全設計を避けることができ、基礎選定時のコストメリットにもつながっていると考えています。
無料で使える「地盤サポートマップ」
-地盤サポートマップの開設経緯を教えてください。
「地盤サポートマップ」は、日本全国の地盤データを地図上で確認できる、当社が無料で提供している地盤情報サイトです。地盤の強さや液状化の可能性、地震時の揺れやすさなど、住宅建築や土地購入の際に重要となる情報を、専門知識がなくても直感的に把握できるよう設計しています。もともとは社内向けのツールとして活用していましたが、東日本大震災をきっかけに、一般の方々の地盤への関心が高まったことを受け、2015年に一般公開しました。一般の方にとって「分かりやすさ」を最優先にしており、国や自治体が公開しているハザードマップを見る前の“入口”として、まず地盤リスクを身近に知っていただくことを目的としています。現在では年間150万回以上閲覧されるなど、多くの方にご利用いただき、安心・安全な住まいづくりを支える情報サイトの一つとなっています。
データが語る、日本の地盤
-貴社の住宅事業者向けサービス“地盤サポートマップPro2(有償サービス)”では、AIによる地盤調査結果の予測・解析や、地盤改良方法や改良工事概算費用の算出等を、数分間でレポート作成できるそうですね。
はい。該当地域の周辺情報をもとに、地盤改良工事の概算費用などを自動で算出するサービスです。もともとは、当社が活用してきたマップ情報をベースにしており、それを住宅事業者様向けのサービスとして展開しています。
事業者様にとって、実際に住宅を建てる前の打ち合わせや、土地を購入する段階で、その土地にどの程度の地盤改良が必要になるのかを把握する際に活用いただいています。一方で、現在表示される概算費用の大半は、平常時を想定した地盤対策費用が中心となっており、液状化対策についてはデータが十分に蓄積されていないため、ほとんど反映されていないのが実情です。
-このサービスのリリースはいつ頃ですか。地盤サポートマップ関連のサービスについて、貴社の今後の展望などを教えてください。
2025年4月にリリースしました。当社は、長く離島を含めた全国で住宅地盤の調査を実施しており、累計250万棟の地盤情報を保有しています。今後は、地盤情報をより一層活用できるサービスを考えていきたいと考えています。

Section 4:伝える、つながる
土に触れたことがない子どもたちへ
-貴社は住まいの安心研究所という情報提供サイトを構築されていますね。
「住まいの安心研究所」は、地盤と建物に関する専門的で難しい内容を、一般の方にも分かりやすく伝えることを目的に構築した情報提供サイトです。当社の営業が日頃お客様に説明している内容を、専用キャラクターが解説する形にすることで、親しみやすく理解しやすいサイトとしています。JHS公式キャラクター「ジャパわん」は社内公募によって決定しました。当社の直接のお取引先は住宅事業者ですが、実際に住まいを購入・建築されるのは建て主様です。そうした方々にも当社の取り組みや価値を知っていただきたいという思いから、広報活動の一環として本サイトを運営しています。土地購入時の注意点や、家を建てる前に知っておきたい地盤調査の基礎知識、災害対策など、住宅や土地、リフォームを検討している方に役立つ情報を、「安全・安心」という視点で分かりやすく発信しています。今後はSNSも活用しながら、より多くの方に当社の魅力を伝えていきたいと考えています。
-「土のふしぎ体験教室(光るどろだんご作り)」という小学生に向けた活動を2014年より実施されていると思いますが、取り組み効果など実感したところはありましたか。そのときの小学生の反応はどうですか。
当社では2014年より、CSR活動の一環として小学生を対象に「土のふしぎ体験教室(光るどろだんご作り)」を無料の出前授業として実施しています。近年は校庭が土でない学校も多く、土に触れたことのない子どもたちが増えていることから、土に親しみを持ってもらいたいという思いで取り組んでいます。授業ではまず、「土の授業」として地盤の大切さや防災について分かりやすく説明し、その後1~2時間かけてどろだんご作りを行います。子どもたちは作業に夢中になり、完成した光るどろだんごを見て「楽しかった」と喜んでくれる姿が多く見られ、教育的な効果とともに高い満足度を実感しています。また、夏休みには当社の本社で一般の親子を対象とした体験教室も開催しており、自由研究に活用できることもあって、毎年多くの方に参加いただくなど、大きな反響をいただいています。

Section 5:東京の未来へ
液状化対策が「当たり前」の社会を目指して
-東京都としてはコンソーシアム全体で液状化対策が当たり前に実施されるような世の中となるよう、気運を高めていきたいと考えています。今後そうしたことを推進するためにどういった施策が必要だと考えていますか。
まず液状化対策をするにしても液状化調査をしないとその必要性が分からないので、当社としては液状化調査をまず実施することを推奨します。ネガティブな情報になる可能性もありますが、正しい情報を得ることが重要だと考えています。液状化判定調査には補助金が出ますので、まずは建て主様に液状化調査をしてもらうことを目指します。
-ネガティブな情報だけども正しく知ることがまず重要ということでしょうか。
小規模建築物基礎設計指針の改定により、液状化に関するリスクコミュニケーションの重要性が明確に示されました。適切なリスクコミュニケーションを行うためには、液状化に関する正確で根拠ある情報が欠かせません。とりわけ、ネガティブな情報を避けたり過小評価したりする姿勢では、真に意味のあるリスクコミュニケーションは成立しません。
そのため、根拠に基づいた調査を行い、その結果を正しく共有することが重要であると考えています。
ネガティブ情報から目を背けたらリスクコミュニケーションは行えない 酒井 豪 氏
-貴社はコンソーシアムの中でどういった役割を発揮していただけますでしょうか。
当社としては地盤サポートマップも含めた情報提供をまず丁寧に行うことを重視しています。そのうえで、土地に対する地盤調査を適切に実施することの重要性を皆さんに広く周知していきたいと考えています。
液状化の可能性が把握されていたにもかかわらず被害に遭ってしまう事態を防ぐため、液状化への正しい理解を促し、事前に備える意識を高めていきたいと考えています。ハード対策に加え、保険も含めた対策が不可欠であるという考え方の浸透を目指しています。
液状化の可能性が把握されていたにもかかわらず被害に遭う
――そんな事態を防ぎたい 内山 雅紀 氏
両氏の言葉が印象的だった。情報を提供し、調査を促し、対策を支える。地盤のプロフェッショナルとして、東京の安心な住まいづくりを 足元から支え続けている。