「戦後復興から80年、日本のインフラを支えて ~日本工営が築く社会基盤~」
インタビュー
「専門家として、誰にでもわかる伝え方を追求したい」――
日本を代表する総合建設コンサルタント、日本工営株式会社。
地盤技術部は、空港・港湾・河川など、様々な土木構造物における地盤の調査・解析・設計を行い、「見えない土台」を支えてきた。近年の地震や液状化の脅威を前に、技術を「護り、伝える」日本工営の取り組みについて聞いた。
PROFILE
日本工営株式会社
基盤技術事業本部 地盤技術部 課長
南雲 祐一郎氏(写真中央)
基盤技術事業本部 地盤技術部 課長
黒川 信子氏(写真右)
基盤技術事業本部 地盤技術部
須山 瑞紀氏(写真左)
Section 1:安心安全な社会基盤づくり
-貴社は、国土・インフラの調査・解析・設計等、幅広い事業領域に携わっており、防災インフラや都市開発に取り組まれています。こうした事業に注力されるようになった理由や経緯について伺えますでしょうか。
日本工営は、創業者の久保田豊が「誠意をもってことにあたれば必ず途(みち)は拓(ひら)ける。」という信念のもとに起業しました。技術を通じて社会の基盤を築くという国づくりの精神のもと、全社一丸となって業務に取り組んでいます。
防災インフラは注力分野の一つであり、これは戦後復興という当社の原点に深く結びついています。戦争で傷ついた国土の再建から、安全・安心な社会基盤づくりこそが発展の基盤であるという考え方に基づき業務を進めてきました。
日本はご存知のとおり地震や津波、豪雨、土砂災害など自然災害が多い国であり、こうした脅威から人々の生命や財産を守ることが創業以来の当社の使命です。防災インフラ関連の事業としては1966年に防災部を設立しました。都市開発に関しては、2016年に英国の建築会社の買収を機に都市空間事業をグループに加え、主要セグメントとしてスマートシティや都市開発に注力することにしたという経緯があります。2023年に持株会社ID&Eホールディングス(株)を設立、2025年には東京海上グループに参画しています。

Section 2:全てのインフラを支える地盤
- 2011年東日本大震災をはじめ、近年は自然災害が頻発しています。こうした社会背景の中、貴部署では幅広くインフラや土木・地盤構造物に関する業務に多数携わられてきていることと思います。どういった業務を担っているのでしょうか。
私たち地盤技術部は、全てのインフラの基礎となる地盤に対する検討を行っています。土台となる地盤を正確に把握できていなければ、その上に構築する設計や施工はうまくいきません。各種調査やこれまでに蓄積した知見・スキルを基に、基盤となる部分に注力して業務を行っています。 地盤技術部は、他部署と協業しています。空港・港湾・河川など、それぞれの分野で必要となる地盤条件や着眼点が異なるため、様々なものを俯瞰して検討し適切な情報を提供することに注力しています。 また、防災・減災・耐震分野にも取り組んでおり、現在注目されている大規模地震に備え、インフラのどの部分を適切に対策すべきか等検討しています。空港や河川、上下水道などの耐震調査や液状化対策の検討を主に行っています。
Section 3:液状化に向き合う
見えない被害へのアプローチ
-液状化に対する設計における技術的な難しさはなんでしょうか。液状化は地震が発生して初めて被害が現れるため、シミュレーションでの設計になると思いますが、貴社ではどのような対応をされているのでしょうか。
まさに被害が起こってみないと分からないというのが難しいところですね。地震の外力を安全側に見積もれば見積もるほど被害想定や対策が大きくなるためバランス感覚が重要になります。全てを安全側にするのではなく、想定される被害や破壊メカニズムを明確にしたうえで、当該構造物に対して最適な対策方法を提案することが最も難しく、そして、大切であると考えています。

土木構造物と住宅の要求性能
確にすることがスタートになります。L1※では「破壊させない」、L2※では「補修でよい」というような要求性能を最初に決めることが肝になります。
ただ、一般住宅への対策については要求性能があまり定まっていないように感じます。
もちろん液状化の計算や検討はできますが、完全に直すべきか、どこまで許容するかといった要求性能を決めておかないと、どこまでの対策が必要か、個人宅にどのレベルの対策を求めるか、全員が納得できるレベルにできるか難しい問題だと思います。費用との兼ね合いもありますし、どこまで対策するかを決めるのは難しい問題です。

Section 4:「伝える」仕事
液状化の実験装置を用いてわかりやすく伝える
当コンソーシアムは液状化に関する普及啓発を目的に、2025年9月28日開催の「WE ARE かつしかでぃ!」への出展を行い、日本工営(株)様に液状化実験装置を用いた展示をしていただきました。
ブースには親子連れや葛飾区民が来場し、液状化が起こる仕組みを見て、触って、楽しく学んでいただきました。

日時:令和7年9月28日(日)
場所:葛飾区奥戸総合スポーツセンター陸上競技場
イベントページURL:https://lp.nankatsu-sc.com/20250928/
-この度は「WE ARE かつしかでぃ!」に出展いただきまして、ありがとうございました。
このような普及啓発活動を行うようになった経緯や実験装置についてお聞かせいただけますか。
普段は主に学協会主催のイベントで実験を行うことが多いです。市民に土木の理解を深めてもらうことを目指すワーキングによって企画されたイベントなのですが、防災に関する普及啓発もしたいということで、液状化実験を始めました。
実験装置は、対策済みのマンホールと未対策のマンホールを比較する構成で、実際に液状化を発生させて、対策済みの方が浮き上がらないことを確認できる仕組みになっています。動きがあるので目で見て分かりやすく、親御さんや小さい子に興味を持ってもらえます。
実験ではただ驚かすだけでなく、対策をすれば安心であることを説明するまでがワンセットになるように工夫しています。「実際のマンホールもフロートレスの対策を進めていますよ」と説明することで親御さんも安心してくださいます。
Section 5:「伝える」仕事東京都の未来へ
液状化対策が「当たり前」の社会を目指して
-”建築物液状化対策促進 東京コンソーシアム”の設立目的として、首都直下地震等により液状化が予想される都内すべての地域において、建物の安全性を確保し、都民の命や財産を守るため、関係団体が連携し、液状化対策を総合的に促進する、ということが掲げられています。貴社としての取り組み予定など改めて聞かせてください。
普及啓発活動をメインに取り組んでいきたいと思います。例えば、これまで液状化の実験装置はマンホールに対策を仕込んで、液状化しないようにする、といった仕組みを取り入れていましたが、建築物の基礎の模型などを入れても面白いのかもしれません。
また、住宅に適用可能な新しい地盤改良工法が出てきた場合は、そういったものを積極的に設計に取り入れ提案し微力ながら液状化対策工法の普及ができればと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。
「専門家として、誰にでもわかる伝え方を追求したい」
その言葉が象徴するように、日本工営は技術を「護り、伝える」ことを大切にしている。液状化の実験装置を用いた普及啓発活動は、対策によって得られる安心感を実感してもらうための工夫だ。調査・解析・設計の総合力と、中立的な立場からの情報提供。建設コンサルタントとして、日本工営はこれからも東京の「見えない土台」を支え続けている。